あるメキシコの日系企業に対してコンサルティング業務をしていたら、貨物保険(輸送保険)に関してひどく驚かされたことがある。

日本にある本社などから製造の為の部材を輸入しているが、それらの通関関連書類をチェックしていると、どうも「保険費用」の部分が商品価値の一部として税関申告されていないのである。

例えば、建値が FCA や FOB の場合、当然輸送費用は buyer 側で負担するが、それに加えて保険費用も通関のための customs value (当地ではスペイン語で Valor en Aduana と言われる)の一部として通関申告しなければならない。

そこで、小生のアドバイスとしては、「保険費用も輸入者側で負担している筈なので、通関の際の商品 value に含める必要がある。また、この機会に総括保険証書をチェックし、どのような条件が含まれているか、通関の為の保険費用を算出する為の保険料率はいくらか、などを確認した方がよい」と言う recommendation を提供した。

すると、「保険証書をチェックしたが、航空貨物に就いては証書から除外されている」との事である。説明を聞くと、「日本の本社から発送される航空貨物の場合は、日本側が付保する事で合意されていたので、これらは当社の総括保険に含めなかった」との事である。

では、何故 FCA などで買い付けされているのか。この企業は本社から部材や機械設備のすペパーツなどを送って貰う場合、かなり頻繁に航空貨物を利用しており、少なくとも本社が発行する invoice を見る限り、本社側で付保されているようには見えない。

また、条件が CIF や CIP であれば、当然船積書類の中に保険証券が含まれる筈であるが、これもファイルに見当たらない。

そこで、例えば 1,000 ドル以上の商品であれば必ず個別の輸送保険をアレンジする、など、具体的な「輸送保険に関する規定」を策定すべきと進言した。勿論、今後どのように貨物保険をマネージするか、本社と協議し、本社の意向も取り入れ、現地法人としての規定を作る必要があるだろうが、「何万ドルもする商品の輸送において、全く誰が保険を掛けているか判らない」と言う事は避けるべきである、と recommend しおいた。

どうも、メキシコの企業は保険に関する意識が低いので、貨物輸送に於いて付保率が約半分程度と聞いた事がある。

ところが、日系企業であっても、貨物の輸送や保険をメキシコ人スタッフに任せておくとこのような事態に陥る可能背があると言う事である。

メキシコ人スタッフには、「例えば数万ドルの小切手、或いは現金を持っていたら、その辺に放置するとやばいと思って、机や金庫に鍵を掛けてしまっておくのじゃないの?それが、同じくらいの value であっても商品であるとどうしてきちんと保険を掛けなければいけないと思わないの?」と小生が質問すると、「それもそうだな」との事であった・・・。

通関業者も保険費用を輸入者が申告しないと、「保険費用は入っていないようですが、これは通関申告書類に含めなくて良いんですか?」などと親切に聞いて来ない。何故なら、保険を付けているか否かはオプションであるからである。

保険が付けられていながら税関 value に含めないと言うのは違法であるが、元々付けられていないのであれば、それを申告する義務は当然ながら生じない。

幸いこれまで貨物が輸送途上で盗難に遭ったとか、ダメージを受けた、と言うケースがない為、これまで保険が掛かっているのかどうかあやふやであった、と言う事のようであるが、今後は小生の recommendation を基にきっちりした保険マネージの為の規定を策定して欲しいものである・・・。