さてさて。随分本ブログの更新を怠っていました。


その間に、東北大震災が起こり、大変な被害をもたらしました事は皆さんご存知の通りです。


この震災で亡くなった多くの方のご冥福をお祈りすると共に、被災者の方々にお見舞いを申し上げます。


先日、援助金を募る為のバザーがメキシコ在住日本人有志の力で開催され、小生も古本や中古
DVD を寄付し、ついでに竹内まりやの CD や文庫本などを買って来ました。

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27日のチャリティーコンサートには行けませんでしたが、まだ別の有志のコンサートが二つほどあるようなので、少なくともどれか一つには行ってみたいと思います。

さて、今回はある日本企業の方からメールでご相談を頂きましたので、例によって、ご相談の内容と小生の回答をこの場でご披露したいと思います。


まず、ご相談の内容です。


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初めてご連絡させて頂きます。


現在、私はアメリカで働いております。


この度、客先の依頼をうけ、現在アメリカで使用している機械をメキシコ の新工場に運んでほしいとの依頼がありました。


見積を作成するに当たりご相談がありメールさせて頂きました。


機械の梱包・輸送に関しては輸送業者を見つけましたが、アメリカからメ キシコの国境を越えるに当たっての通関業者が必要だと思います。これはどのようにして見つければよいでのでしょうか?


それとも通関の範囲は客先の範囲であり、見積対象からはずすべきでしょうか?


何卒宜しくお願い致します。


○○(相談者様のお名前です)

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以下小生の回答です。
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○○

メールでのご相談有り難う御座います。


さて、ご相談の件ですが、いくつかポイントがあると思われますので、ポイントごとにコメントさせて頂きます。


1.
メキシコ ‐ 米国国境での通関:下記の手順で通関が行われます。

1)
米国サプライヤーから貨物を米国側 forwarder 倉庫まで届ける。この forwarder は通常メキシコの客先(consignee / importer)が指示し、同社のメキシコ側通関業者の子会社である。

2)
forwarder に於いて、米国側の SEDShipper's Export Declaration)、貨物の通関前チェック(メキシコ側通関業者の保護の目的もあり、禁制品がないか、数量が合っているかなどをチェックする)、メキシコ側通関書類作成を行う。

3) トレイラー単位の貨物(FTL = Full Truck Load) であれば、通常米国側トラック業者がメキシコ側に提携しているトラック業者がいるので、トレイラーから貨物は荷降ろしされず、tractor head が切り離され、引き返して行きます。

4)
通関の準備が出来た段階(メキシコ側輸入者から必要書類がメキシコ通関業者経由 forwarder に届き、且つ税金が振り込まれ、forwarder による通関申告書類が作成された段階)で、国境を越える為の特別な許可を得ている輸送業者にトレイラーを引き渡します。

5)
別途、forwarder のメッセンジャーが国境の検問のところに書類と共に行き、該当するトラック(国境通過のトラクターヘッドプラス貨物を入れたトレーラー)を待ちます。

6)
該当のトラックが通過する際に書類をメキシコ側係官に渡し、信号機を押します。これで赤信号が付けば税関による検査となり、青信号であれば通過を許されます。(尚、現在ではほとんどの税関で実際に緑や赤の色がつく信号機は置かれていないと聞いています。殆どの税関ではバーコードをスキャンし、単に「行って宜しい」或いは「貨物検査を受けなさい」と指示されるだけです)。

7)
通過したトラックは指定のトラック業者(メキシコ側長距離トラック輸送業者、通常の場合、米国側輸送業者と提携しており、米国側業者のトレーラーを貨物が入ったまま輸送する)のヤードに届けられ、その場所以降はこの長距離専門の業者にて最終目的地まで輸送されます。

2.
通関業者をどのように見つけるか:一般的に言って、輸出や輸入に経験があるメキシコの企業は自身で起用した通関業者を持っており、それを無理に海外サプライヤー側が探し出した通関業者に変えさせるのは無理があります。と言うのも、メキシコでは(特に輸入の場合)起用する通関業者を大蔵省に届け出ないといけないからです。

この為、まず客先に通関業者を持っているか、持っていなければ御社の方で探すべきか、を確認されたら良いと考えます。若し、客側で通関業者がある、と言うのであれば、そこの子会社である米国側
forwarder の会社名、住所などを教えて貰えるので、そこ向けにトラック輸送をアレンジすれば良い事になります。

3.
「通関は客先の範囲であり、見積もりから外すべきか」:下記コメント申し上げます。

1)
これは客先と御社との交渉の結果によって変わって来ます。ご存知かと思いますが、Incoterms と言う貿易に於ける buyer seller との間で取り決める価格およびお互いの責任範囲を決めたタームがあり、例えば、客先が DDP Mexico City などの条件を要求して来たら、これは仕向け地の国内渡しでしかも最終目的地である Mexico City まで全てサプライヤー側が責任を持つ、と言う条件ですので、seller である御社が国境に於ける通関もアレンジしなければいけない、と言う事になります。

2)
ただ、お話を伺うと、現在見積もりを客先に提出する段階で、特に「DDU で見積もりせよ」などの指示が客先の引き合い書の中に含まれていない、と言う事のようですので、御社にとり都合の良いタームを提示し、その条件に従い価格を設定されては如何でしょうか。

3)
具体的には、多くの米国サプライヤーがメキシコ向けの見積もり及び契約で使用する ”FOB Laredo" でしょうか。尚、この場合の FOB はインコタームズによるものではなく、米国の FOB です。インコタームズであれば 2010 年版から新しく出来た DATDelivered At Terminal)に相当し、客先が指定する Laredo の倉庫まで輸送すればサプライヤー側の責任が終了する、と言う事です。当然 Laredo - Nuevo Laredo ゲイトウェイで国境を通過するのでなく、San Diego - Tijuana にて通関する、と言う事であれば DAT San Diego と言う事になります。

Incoterms
などの話をもっと詳細にすると可なりややこしくなりますが、ざっとご説明すると凡そ上記の通りです。

尚、蛇足ですが、メキシコの通関関連法規は複雑で、海外サプライヤーが発行する
invoice の書き方まで規制があります。客先の指示に従い船積書類を準備される事をお勧めしますが、メキシコ企業でも運輸スタッフに知識が足りず、通関時に揉める事もありますのでご注意下さい。若し客先から具体的な指示が貰えない、或いは invoice の書き方が良く判らない、などご質問などありましたらお気軽にご一報下さい。

今後とも是非宜しくお願い申し上げます。


伊藤


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終わりのコメント:まぁ、多くの日本人の方にとっては、メキシコと米国の国境でどのように通関がなされるかなんて判らないですよね・・・。実際、メキシコに赴任されている日本人派遣員の方の中でもご存じない方が結構いらっしゃるでしょうね。

このブログ記事がお役に立てば良いのですが・・・。