と言う訳で、こんにちは。

今日は、インコタームズ 2010年版がテーマです。

インコタームズと言えば、貿易をやっている人たちの中で知らない人はいない、と言うくらい「常識中の常識」なんですが、2010年版が発表された、と言う事をご存知の方はどれくらいいらっしゃるんでしょうかね??

実際に発表された正確な日にちは実は小生も知らないんですが(笑)、ごく最近、もうちょっと正確に言うと、せいぜい 2~ 3ヶ月前の事です。

「えっ?知らなかった。じゃぁ、もう新しいヴァージョンを使わなければならないの?」と仰る方もいらっしゃるかも知れませんが、ご安心下さい。名前は「2010年版」ですが、実際に使い始めなさい、と言うのは来年、つまり 2011年 1月 1日から発効です

それに、元々 Incoterms と言うシロモノ自体が法的に使用する義務がある訳ではないので、例えば、「ワシはインコタームズ 2010年版はキライじゃ。2000年版を使い続けるぞい」などと言う人がいれば、使い続けても良い訳です(そのような人がいるんでしょうかね?)。

例えば、DEQ と言うタームが 2010年版ではなくなります。じゃぁ、来年以降 DEQ を使い続けたい、と言う人はどうするか。そのような人(会社)が客先に提出する見積りには、"Delivery term: DEQ XXXXXX (場所の名前)According to Incoterms 2000" と書いておけば良いでしょう。また、契約書にもこのように記載する事が望ましいですね。

でも、インコタームズ自体が Transaction に於ける当事者同士の取り決めなので、「Incoterms 2000 を使いたい」と言う会社でも、客先若しくは仕入先がなんと言うかでしょうね・・・。客先から、「あ。DEQ XXXXX ですか。じゃぁ、Incoterms 2010 で言うと、DAT XXXXXXX って事ですね。」と言われ、結局契約書などにも Incoterms 2010 に基づいたタームを記載しなければならない羽目になるのではないでしょうか。

では、インコタームズ 2000 とインコタームズ 2010 ではどこが違うのでしょうか。まぁ、詳しくは当社が実施するセミナーを受講頂くのが一番良いのですが(なにげに PR です・・・笑)、一番大きな違いは、矢張り 2000年版から 4つのタームが削除され、新たに二つのタームが加わった事でしょう。

結果、これまで 13個のタームであったものが、13 - 4 + 2 = 11 となります。これらは全て D グループの中で行われ、DAF、DES、DEQ 及び DDU と言う 4つが削除され、代わりに DAP 及び DAT と言う二つが加わります。

DAF のように、陸上輸送にしか使われないタームや DES 及び DEQ のように海上輸送しか使われないタームがあるけれど、纏めてしまい、どんな輸送形態でも使えるタームにしちゃったら良いじゃない?と言う発想でこのような変更がなされたようですね。元々 DAF など殆ど使われていなかったタームもこの際とってしまえ、と言う事なのかも知れません。(因みに、米墨国境で商品が受け渡しされる際のタームは DAF である、と主張する通関業者もいるようですが、小生に言わせると余り感心しません。何故なら、元々 DAF と言うタームを読むと、「基本的に Cargo Unloading は行わない」となっているからです)。

さてさて。その他にも細かい変更はありますが、それよりもメキシコに於ける通関でこのインコタームズの新しいヴァージョンの使用がどのように影響を及ぼすか、と言う点を考えてみたいと思います。

メキシコに於ける輸入通関に於いて、インコタームズによる建値を通関申告書類(Pedimento de Importación)にて申告しなければいけない、と言う事をご存知の方は(少なくともメキシコに於ける日系企業で輸入や物流に従事されている方であれば)多いと思います。

では、どこで(どの法律で)そのような義務が規定されているかをご存知の方は?と言うと、そう多くはないかと思います。

これは、貿易細則の中で Anexo 1 の中に Pedimento の用紙が規定されており、Anexo 22 にて pedimento の記入要綱が規定され、更にその Anexo 22 の中の Apéndice 14 にタームのリストが出ているからです。

じゃぁ、その Anexo 22 の Apéndice 14 に新しいタームの DAT と DAP が出ていない、と言う事は、これらのタームで輸入してはいけない、と言う事にならないか、と言うと、今のところ確かにこれらのタームを加える、と言う発表はなされていませんが、2010年版の貿易細則に近々改訂がなされ、その中でこれらが加えらるだろう、と期待されています。

尤も、よっぽど新しがりやでなければ、新しいタームが使われるようになるまでかなり時間が掛かったりするので(うそだと思います?インコタームズ 2000年版で、「FOB は海上輸送だけ!その他の輸送手段では FCA を使うこと!」となっているにも拘らず、日本からの航空貨物の輸入に於ける invoice では可なりの割合で ”FOB Narita" と書かれていますよ・・・)、結構貿易細則の 2011年版(今年の例で言えば、6月末には発表される筈でしょう)にて初めて DAT とか DAP が含まれるようになるのではないでしょうか。

どうでしょう。この際にインコタームズ全体のセミナーとか受講されては如何でしょうか・・・。